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【経営者必見】業務災害保険とは?中級ガイド(中級)

【事例で学ぶ】業務災害保険 中級編
補償の選び方・事故事例と賠償リスクを深掘り!

労災保険だけでは不十分?多様化するリスクに備える「上乗せ補償」と「使用者賠償責任」のポイントを徹底解説。

初級編のおさらい:なぜ業務災害保険が必要なのか?

まず、【業務災害保険 超入門ガイド(初級編)】で解説した重要なポイントをおさらいしましょう。

  • 国の「労災保険」は、従業員を雇う事業主にとって強制加入のセーフティネットですが、精神的苦痛に対する慰謝料や、会社の法的責任(使用者賠償責任)まではカバーしません。
  • そこで、民間の「業務災害保険(任意労災)」が必要となります。この保険には大きく分けて2つの役割があります。
    1. 「上乗せ補償」:国の労災保険の給付にプラスして、従業員への補償を手厚くする。
    2. 「使用者賠償責任(EL)補償」:労災事故に関して会社が損害賠償請求された場合の賠償金や訴訟費用などを補償する。

初級編では、この基本的な仕組みと必要性を解説しました。中級編では、これらの補償内容について、さらに一歩踏み込んで見ていきましょう。


深掘り①:「上乗せ補償」の種類と選び方のポイント

業務災害保険の「上乗せ補償」部分は、万が一の際に従業員やその家族の生活を支えるための重要な機能です。どのような種類があり、どう選んでいけばよいのでしょうか。

死亡・後遺障害補償:どう考える?

従業員が業務災害で亡くなったり、重い後遺障害が残ったりした場合、国の労災保険からの給付だけでは、遺族の生活費や本人の将来の収入減を完全にカバーできないことがあります。

業務災害保険の死亡・後遺障害補償は、この不足分を補うためのものです。保険金額の設定にあたっては、以下のような点を考慮すると良いでしょう。

  • 会社の弔慰金・死亡退職金規程: 就業規則などで定めている金額を支払えるように設定する。
  • 従業員の役職や勤続年数: 役職や勤続年数に応じて補償額に差をつけるか、全従業員一律にするか。
  • 業界水準や競合他社の動向: 福利厚生の一環として、同業他社と比較して遜色のないレベルにする。
  • 経営者の考え: 従業員への想いとして、どの程度手厚くしたいか。

一律の補償額にするか、役職などで差をつけるかは、会社の考え方次第です。保険のえんどうでは、帯広・足寄・十勝の企業様の状況や方針に合わせた最適な設定をご提案します。

入院・通院補償:必要性は?

業務災害保険には、入院日数や通院日数に応じて給付金が支払われる補償もあります。

「労災なら治療費は無料(療養補償給付)だから、入院・通院補償は不要では?」と思われるかもしれません。しかし、以下のような費用は自己負担となる可能性があるため、入院・通院補償の必要性を検討する価値があります。

  • 差額ベッド代(個室や少人数部屋を希望した場合)
  • 入院中の食事代の一部
  • 先進医療の費用(労災保険の対象外となる場合)
  • 入院に伴う雑費(日用品、交通費など)
  • 通院のための交通費

また、従業員が別途、民間の医療保険や傷害保険(例:入院パスポート)に加入している場合もあります。それらの補償内容も考慮しながら、業務災害保険での入院・通院補償の必要性や金額を判断すると良いでしょう。

補償内容のカスタマイズ

業務災害保険の「上乗せ補償」は、保険会社や商品によって様々なプランがあります。

  • パッケージプラン: 基本的な補償(死亡・後遺障害、入院など)がセットになっているプラン。
  • カスタマイズ可能プラン: 必要な補償項目や保険金額を、会社のニーズに合わせてある程度自由に組み合わせられるプラン。

例えば、「死亡・後遺障害補償は手厚くしたいが、入院補償は最低限で良い」「役員と一般従業員で補償額を変えたい」といったご要望にも対応できる場合があります。どのようなリスクに重点的に備えたいかを明確にし、無駄のない、かつ十分な補償内容を検討することが重要です。

業務災害保険の上乗せ補償内容のカスタマイズ例を示す図

保険のえんどうでは、貴社の状況やご要望を詳しくお伺いし、最適な補償の組み合わせをご提案します。


深掘り②:「使用者賠償責任(EL)」の重要性と高額賠償リスク

業務災害保険の中でも、特に経営者が注目すべきなのが「使用者賠償責任(EL: Employer’s Liability)補償」です。これは、会社の存続にも関わる重要なリスクへの備えとなります。

「安全配慮義務違反」とは?(具体例)

会社(使用者)は、従業員(労働者)が安全で健康に働けるように配慮する義務(安全配慮義務)を負っています。この義務を怠った結果、労災事故が発生したと判断された場合、会社は従業員やその遺族に対して、労災保険とは別に損害賠償責任を負うことになります。

具体的に、どのような場合に安全配慮義務違反が問われる可能性があるのでしょうか?

  • 危険な作業環境の放置: 機械の安全装置が故障したまま使わせていた、有害物質が漏洩する可能性があるのに換気対策が不十分だった、など。
  • 安全教育・訓練の不足: 新人従業員に十分な安全教育を行わずに危険な作業をさせた、危険予知トレーニング(KYT)などを実施していなかった、など。
  • 長時間労働・過重労働の放置: 過労死ラインを超えるような長時間労働を黙認し、従業員が過労死や精神疾患を発症した、など。(メンタルヘルス関連で後述)
  • 健康管理措置の不備: 健康診断の結果、異常が見られた従業員に対して、適切な事後措置(業務軽減、受診勧奨など)を行わなかった、など。
  • ハラスメントの放置: 職場内でのパワハラやセクハラを認識しながら、適切な対応を取らなかった結果、従業員が精神疾患を発症した、など。(ハラスメント関連で後述)

これらの義務を怠ると法的責任を問われる可能性があり、事業継続にも影響を与えかねません。(関連ブログ:事業継続力強化計画」の認定をされました。|BCP認定|保険料も安くなる!?

高額化する賠償事例

近年、労災に関する訴訟では、数千万円から1億円を超える賠償判決も珍しくありません。以下は、報道されているような高額賠償判決の事例(業種・概要)です。

  • 建設業:現場監督の長時間労働による過労自殺で、遺族が会社を提訴。安全配慮義務違反が認められ、約1億円の賠償命令。
  • 製造業:機械に巻き込まれて従業員が死亡。安全対策の不備が指摘され、遺族に約8,000万円の賠償命令。
  • 運送業:長時間運転による過労が原因でドライバーが事故死。会社の運行管理体制の不備が問われ、遺族に約5,000万円の賠償命令。
  • IT・サービス業:システムエンジニアの過労自殺。長時間労働と上司のパワハラが原因とされ、遺族に1億円超の賠償命令。
  • 介護・福祉業:介護職員が利用者からの暴力により負傷。施設側の安全対策不足が指摘され、損害賠償請求が認められるケース。

(上記は報道等に基づく一般的な事例概要であり、特定の判例を示すものではありません。)

これらの賠償金は、国の労災保険からは支払われません。全額、会社が負担する必要があります。もし、使用者賠償責任(EL)保険に加入していなければ、会社の経営は深刻な打撃を受け、最悪の場合、倒産に至る可能性すらあるのです。

高額な損害賠償が会社の経営を圧迫するイメージ図

賠償請求される主な項目

会社が損害賠償請求された場合、主に以下のような項目について支払いを求められる可能性があります。

  • 逸失利益: 死亡や後遺障害によって、本来得られたはずの将来の収入。
  • 慰謝料: 本人や遺族の精神的苦痛に対する賠償。
  • 治療関係費: 労災保険でカバーされない治療費(先進医療など)や、将来の介護費用など。
  • 弁護士費用: 訴訟にかかった弁護士費用など。

使用者賠償責任(EL)保険は、これらの賠償金や訴訟費用を補償することで、会社の財務的リスクを軽減します。


深掘り③:多様化する現代の労災リスク

労災リスクは、従来の「ケガ」だけではありません。近年、社会の変化とともに、以下のような新しいタイプのリスクへの備えも重要になっています。

メンタルヘルス不調(精神疾患)

長時間労働、業務上の強いプレッシャー、職場環境の問題などを原因とするうつ病などの精神疾患も、労災と認定されるケースが増加しています。特に、過労自殺などの痛ましい事態に至った場合、会社の安全配慮義務違反が厳しく問われ、高額な損害賠償に発展する可能性があります。

業務災害保険の中には、精神疾患による労災にも対応できるプランや、従業員のメンタルヘルス対策(相談窓口の設置費用など)をサポートする特約が付帯できるものもあります。

ハラスメント関連

パワーハラスメント(パワハラ)、セクシャルハラスメント(セクハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)など、職場におけるハラスメントが原因で、従業員が精神疾患を発症したり、休職・退職に追い込まれたりするケースも後を絶ちません。

ハラスメントは、被害者からの損害賠償請求だけでなく、会社の信用失墜にも繋がります。使用者賠償責任(EL)保険の中には、ハラスメントに起因する損害賠償リスクをカバーできるものや、ハラスメント防止体制の構築費用(研修費用、相談窓口設置費用など)を補償する特約もあります。

テレワーク中のリスク

働き方の多様化によりテレワークが普及しましたが、自宅での業務中や、業務に関連する移動中(例:サテライトオフィスへの移動)の事故も労災の対象となる可能性があります。

例えば、「自宅で業務中に、椅子から転倒して骨折した」「会社指示でサテライトオフィスへ向かう途中に事故に遭った」などが考えられます。テレワーク環境における安全配慮(労働時間管理、作業環境への配慮など)も会社の責任となります。

業務災害保険は、このような新しい働き方における労災リスクにも、基本的には対応可能です(補償範囲の確認は必要)。

このように、労災リスクは時代とともに変化・多様化しています。従来の対策だけでは不十分かもしれません。帯広・足寄・十勝地域の企業様も、最新のリスク動向を踏まえた上で、自社に必要な備えを見直すことが重要です。


業務災害保険選びのチェックポイント【中級編】

自社に合った業務災害保険を選ぶためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。中級編として、以下のチェックポイントを確認しましょう。

  • 補償範囲は適切か?
    • 対象となる役員・従業員の範囲は自社の実態に合っているか?(パート・アルバイト、派遣社員、下請け業者の従業員などの取り扱いは?)
    • 業務中の事故だけでなく、通勤災害、出張中の事故、会社行事中の事故などもカバーされるか?
    • 精神疾患やハラスメント関連のリスクはカバーされるか?
    • 海外での業務災害は対象となるか?(海外出張や駐在が多い場合)
  • 保険金額(支払限度額)は十分か?
    • 特に使用者賠償責任(EL)の保険金額は重要。近年の高額賠償判例を踏まえ、最低でも1億円以上、できれば3億円や5億円、無制限などの設定を検討すべきです。十分な金額がないと、保険に加入していても自己負担が発生する可能性があります。
    • 死亡・後遺障害補償などの上乗せ部分も、会社の規程や方針に合わせて適切な金額を設定する。
  • 免責金額(自己負担額)の有無と金額は?
    • 保険金支払い時に、会社が自己負担しなければならない金額(免責金額)が設定されている場合があります。免責金額が低いほど安心ですが、保険料は高くなる傾向があります。
  • 必要な特約は付帯できるか?
    • 使用者賠償責任(EL)補償は必須として、その他に、メンタルヘルス対策費用、ハラスメント対策費用、事故対応・再発防止費用、初期対応費用(見舞金など)といった特約が必要か検討する。
  • 保険料は妥当か?
    • 必要な補償を確保した上で、複数の保険会社の商品を比較検討し、保険料が適正か判断する。ただし、安さだけで選ぶのではなく、補償内容や事故対応サービスとのバランスが重要です。

これらのポイントを全て自社だけで判断するのは難しいかもしれません。ぜひ、保険の専門家である私たちにご相談ください。貴社の状況を詳しくお伺いし、最適な保険選びをお手伝いします。


保険のえんどうだからできる、帯広・足寄・十勝の企業様への最適なプランニング

業務災害保険は、会社と従業員を守るための重要なツールですが、その内容は複雑で、どの保険を選べば良いか迷われることも多いかと思います。

私たち保険のえんどうは、単に保険商品を販売するだけでなく、貴社の事業内容、規模、経営方針、そして潜在的なリスクを深く理解した上で、真に価値のある保険プランニングを提供することを目指しています。

  • オーダーメイドのご提案: 画一的なプランではなく、貴社の業種特有のリスク(例:建設業の高所作業リスク、運送業の長時間運転リスクなど)や、従業員構成、福利厚生への考え方などを考慮し、必要な補償を過不足なく組み合わせたオーダーメイドのプランをご提案します。帯広・足寄・十勝地域の特性も考慮いたします。
  • 最新リスクへの対応: メンタルヘルス不調やハラスメント、テレワークなど、現代特有の労災リスクに関する最新情報を提供し、それらに対応できる保険プランや特約をご案内します。
  • 事故発生時の安心サポート: 万が一、労災事故が発生してしまった場合、保険会社への連絡、必要書類の準備、保険金請求手続きなどを、地域密着の担当者(スタッフ紹介)が親身になってサポートします。複雑な手続きや保険会社とのやり取りも、安心してお任せいただけます。(取扱保険・サービス / 会社概要・アクセス

「今の保険内容で十分なのか不安」「もっと自社に合った保険があるのではないか」と感じていらっしゃる帯広・足寄・十勝の経営者様・担当者様は、ぜひ一度、保険のえんどうにご相談ください。


まとめ:リスクを理解し、最適な備えを。上級編へのステップ

今回は「業務災害保険 中級編」として、上乗せ補償の選び方、使用者賠償責任(EL)の重要性と高額賠償リスク、そして現代的な労災リスクについて掘り下げてきました。

中級編のポイントは以下の通りです。

  • 上乗せ補償は、会社の規程や方針に合わせてカスタマイズすることが可能。
  • 使用者賠償責任(EL)は、会社の存続に関わる高額賠償リスクに備えるために不可欠。保険金額の設定が重要。
  • 労災リスクは多様化しており、メンタルヘルスやハラスメントへの備えも必要。
  • 保険選びでは、補償範囲、保険金額、免責金額、特約、保険料のバランスを総合的に判断することが大切。

自社を取り巻くリスクを正しく理解し、それに対して適切な保険で備えることが、持続的な企業経営の基盤となります。ぜひ、この機会に自社のリスク対策状況を見直してみてください。

次回は【上級編】として、保険料がどのように決まるのか、具体的な保険商品の比較ポイント、事故事例への対応フローなど、さらに実践的な内容に踏み込む予定です。

中級編の内容を踏まえ、「自社の場合はどうだろう?」と具体的な疑問が湧いた方は、ぜひお気軽に私たち保険のえんどう(帯広・足寄)までお問い合わせください。

業務災害保険に関するよくあるご質問 (FAQ) – 中級編

業務災害保険について、さらに踏み込んだご質問にお答えします。

Q1. 使用者賠償責任(EL)の保険金額は、いくらに設定するのが一般的ですか?

A1. 近年の高額賠償判例(数千万~1億円超)を踏まえ、最低でも1億円以上を設定される企業が多いです。業種や事業規模、潜在的なリスクの高さによっては、3億円、5億円、あるいは無制限といった、より高額な設定を検討することも重要です。万が一の際に自己負担が発生しないよう、十分な補償額を確保することをおすすめします。貴社に最適な保険金額については、ぜひご相談ください。

Q2. 精神疾患やハラスメントによる損害賠償請求も、使用者賠償責任(EL)で補償されますか?

A2. 保険商品によりますが、精神疾患やハラスメントが業務に起因すると認められ、会社に法的賠償責任が発生した場合に、使用者賠償責任(EL)保険の対象となるプランが増えています。ただし、補償の対象となる範囲や条件(例:故意のハラスメントは対象外など)は保険会社や商品によって異なりますので、契約内容をしっかり確認することが非常に重要です。また、関連する特約(メンタルヘルス対策費用、ハラスメント相談費用など)の付帯も検討すると良いでしょう。

Q3. 建設業ですが、下請け業者の従業員が自社の現場で事故を起こした場合、自社の業務災害保険で補償されますか?

A3. 通常、自社の業務災害保険は、自社の役員・従業員が対象です。下請け業者の従業員に対する補償は、原則としてその下請け業者が加入する労災保険や業務災害保険で対応されます。ただし、元請けとして現場の安全管理責任を問われ、下請け業者の従業員から損害賠償請求を受けるリスクはあります。このリスクに対しては、自社の使用者賠償責任(EL)保険や、建設業向けの請負業者賠償責任保険などで備える必要があります。契約関係や現場の状況によって対応が異なるため、専門家にご相談ください。

Q4. 保険料を少しでも安く抑える方法はありますか?

A4. 保険料はリスクに応じて決まるため、単純に安くすることだけを追求するのは危険ですが、いくつかの工夫は考えられます。

  • 補償内容の見直し:本当に必要な補償に絞り込み、不要な特約を外す。
  • 免責金額の設定:免責金額(自己負担額)を設定すると保険料は安くなりますが、負担可能な範囲で設定する必要があります。
  • 安全対策の実施:日頃から安全衛生活動(ヒヤリハット活動、安全教育、KYTなど)に積極的に取り組み、労災事故の発生率を低く抑える努力をすることで、将来的に保険料の割引に繋がる可能性のある保険会社もあります。(ただし、短期的な効果は限定的です)
  • 複数社比較:同じような補償内容でも保険会社によって保険料が異なる場合があるため、複数の保険会社の見積もりを比較検討する。

保険のえんどうでは、貴社のご予算も考慮しながら、最適な保険料と補償内容のバランスをご提案します。

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